拉致被害者資料 「裏付けるもの皆無」 再調査要求へ(毎日新聞 04.12.25)
拉致被害者資料 「裏付けるもの皆無」 再調査要求へ(毎日新聞 04.12.25)
政府は24日、11月の日朝実務者協議で北朝鮮から提供された安否不明拉致被害者10人に関する資料・情報の精査結果をまとめ、公表した。「8人死亡、2人未入国」という北朝鮮の説明について、横田めぐみさんの「ニセ遺骨」鑑定結果などをもとに「説明を裏付けるものは皆無」と断定。
(略)
精査結果は、北朝鮮から持ち帰った物証の評価を行うとともに、10人に関する説明のうち39項目の疑問点を明記した。そのうえで「北朝鮮側の『結論』は客観的に立証されておらず、我が方としては全く受け入れられない」と結論付けた。
横田めぐみさんとは別人のものと判明した「遺骨」のDNA鑑定結果は「国内で最高水準の研究機関による客観的で正確な鑑定結果」と強調。北朝鮮が「受け入れられない」としていることについては「何の合理的根拠もない」と突っぱねた。
横田さんの夫だったとされるキム・チョルジュンさんが「遺骨を掘り起こし、火葬して持っていた」と説明したことに対しては、特殊機関に属するというキムさんが単独で行動した点は「余りに不自然」と指摘。一方、面会に応じた人物が本当にキムさんかどうかは、科学的手法でも確認できなかったとしている。
拉致の責任者とされる2人の刑事裁判記録については、(1)多くの部分が塗りつぶされている(2)具体的にどの拉致事案に関連したのかを示す記述がない−−などをあげ、「責任者は処罰されたとする主張を裏付けるものであるとは到底認められない」と証拠価値を否定。さらに、裁判記録が98、99年に作成されていた点に着目し、北朝鮮が日朝交渉の場などで拉致の存在を全面否定していたことについて「北朝鮮の姿勢が極めて問題であることを改めて指摘せざるを得ない」と批判した。
このほか、(1)約400ページある横田さんのものとされるカルテには年齢の間違いが複数個所ある(2)田口八重子さん、松木薫さんの交通事故記録には死亡者の氏名の記述がない−−などを列挙、北朝鮮の説明に疑義をはさんだ。支援団体・救う会が提起した横田さんの写真の合成の可能性については「現時点では、画像合成の痕跡を示すものは認められていない」としている。
細田官房長官は24日夕の記者会見で、生存者をただちに帰国させるよう求めることについて「死亡という先方の説明には論拠がないので、生存している可能性が高いという前提で厳しく要求する」と説明した。
政府は拉致事件に関する北朝鮮資料の精査結果を公表するのに併せて、(1)北朝鮮側に強く抗議する(2)北朝鮮に対し、迅速かつ誠意ある回答を求める(3)対応がない場合には政府として厳しい対応を取らざるを得ない−−などと、経済制裁の発動を示唆する「基本的考え方」をまとめた。細田博之官房長官が24日夕の記者会見で読み上げた。政府は25日に「基本的考え方」と「精査結果」「遺骨のDNA鑑定の要旨」の3文書を北京の大使館を通じて北朝鮮側に伝達する。
基本的考え方は、北朝鮮に再回答を求める期限を設けていないが、政府は来年3月を再回答のメドと想定している。核問題をめぐる6カ国協議では、北朝鮮が来年1月下旬に発足する米国の第2期ブッシュ政権の政策を考慮して態度を決めるとみられている。また、中国、韓国は6カ国協議への悪影響を主な理由にあげ、日本に慎重な対応を求めている。このため、政府は実際には来年1〜2月に、北朝鮮の対応、国際情勢などを総合的に見極めたうえで対応を最終判断する考えだ。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=2004122500000006maippol
精査結果の要旨(岩手日報 04.12.24)
政府が24日公表した「安否不明の拉致被害者に関する再調査」の精査結果要旨は次の通り。
【精査の結果】
(1)物証の精査結果
▽「遺骨」とされたもの 横田めぐみさんの「遺骨」として提供されたものは、DNA検出の可能性のある骨片10片を選定し、帝京大、科学警察研究所に鑑定を嘱託。帝京大の骨片5個中4個から同一DNA、ほかの一片から別のDNAが検出。いずれも横田さんのDNAとは異なっているとの結果報告があった。国内最高水準の研究機関の客観的で正確な鑑定結果であり、12月8日に北京の日本大使館を通じ厳重抗議。
北朝鮮側は鑑定結果は受け入れられないとしているが、鑑定結果は全く客観的かつ科学的な検証によるもので、北朝鮮の主張には何の合理的根拠もないと言わざるを得ない。
松木薫さんの「遺骨」である可能性があるとされた骨は帝京大から松木さんとは異なるDNAが検出されたと報告。身体的特徴の鑑定でも合致しない。
▽横田さんの「カルテ」とされる文書 原文は約400ページ。判読が極めて困難で、精査を継続。カルテ記載の人物の年齢が横田さんの当時の年齢と異なっている部分が何カ所かみられる。1979年6月から93年9月までの記録で、それ以降94年4月までのカルテは存在しないとしている。
▽刑事事件記録 多くの部分が塗りつぶされ、横田さんの拉致事件、欧州からの拉致事件関与をうかがわせる記述は若干あるが、被告人が具体的にどの事件に関連したか示す記述はなく、責任者は処罰されたという主張を裏付けるものであると認められない。
これらの記録は98、99年に作成されたとされ北朝鮮側は既にこの時点で拉致事件の存在を認識していたことになる。2002年9月の小泉純一郎首相訪朝まで事件の存在を全面的に否定しており、このような姿勢は極めて問題。
▽交通事故記録 田口八重子さんと松木薫さんに関するものとして提供された交通事故記録(2点)も幾つかの部分が塗りつぶされている。「死亡者」氏名の記述がなく、田口さん、松木さんが事故で「死亡」したとする主張を裏付けるものであると認められない。
▽横田さんの「写真」 提供の写真3枚は警察当局で鑑定を嘱託したが画像合成の痕跡を示すものは認められていない。
(2)拉致被害者に関する個別の疑問・問題点
▽横田めぐみさん 元夫とされるキム・チョルジュン氏がなぜ別人の骨を渡してきたのか極めて不可解。同氏が友人3人と「遺骸」を掘り返し移送、火葬したという説明は不自然。「カルテ」が本人のものであると確認できていない。北朝鮮側は94年3月に平壌49号予防院に入院したとするが、わが方の94年3月に義州の49号予防院に入院したとの情報と矛盾。予防院を散歩中、松の木で首つり自殺したという説明は不自然。「死亡日」も担当医師の記憶だけで説得力のある説明がない。キム・チョルジュン氏については、科学的な手法での本人確認は出来なかった。似顔絵と別に入手していた外見の情報には類似点もあるが、本人確認は断定し得るものではない。
▽田口八重子さん 田口さんは大韓航空機爆破事件実行犯の金賢姫の日本語教育を担当した「李恩恵」と判明しているが、北朝鮮側は全面的に否定。李恩恵と金賢姫が生活した同時期(81−83年)、田口さんと横田さんが共同生活を送ったとするなど、わが方の情報と矛盾。死亡事故について前回「トラックと衝突」と説明していたが、今回は「軍の砲車」としており矛盾。
▽原敕晁さん 拉致実行犯の辛光洙は韓国での判決で「80年6月に南浦港に到着」とされ、北朝鮮の「海州から入境した」との説明と矛盾。「84年11月ごろ、肝硬変と診断」との説明は、診療記録の提示がなく、「病死」を示す客観的情報提示がない。
▽市川修一さん 日本で泳げなかった市川さんが「緊急出張」中、複数回海水浴に行き、9月初めに海水浴をした説明は不自然。市川さんが増元るみ子さんと79年7月20日に結婚したとするが、わが方は増本さんが78年秋から79年10月下旬までほかの日本人女性と同じ招待所で生活、その間結婚していなかったとの情報を有しており明らかに矛盾。
▽増元るみ子さん 心臓まひによる「急死」の客観的裏付けがない。死亡後3、4時間してから検視した医師の供述の信ぴょう性に疑問。
▽石岡亨さん 「よど号」犯の拉致関与は明らかだが、北朝鮮側は全面的に否定。不慮の「ガス中毒死」の客観的裏付けがない。有本恵子さんの旅券は返却されたが、石岡さんの旅券は見当たらないというのは不自然。
▽有本恵子さん 2歳程度の子どもを連れ、11月上旬に不便な招待所に移動することを希望したとの説明は不自然。
▽松木薫さん 事故で「死亡」した者が松木さんであることを示す客観的情報の提示がない。
▽久米裕さん 北朝鮮への入境を否定するが、わが方捜査で補助工作員の在日朝鮮人が工作員に引き渡したことが判明。
▽曽我ミヨシさん 北朝鮮への入境を否定しているが、曽我ひとみさんととともに拉致されたのは明らか。ひとみさんの拉致当初から同行していた女性指導員がミヨシさんに言及している。
【結論】
(1)北朝鮮側から得た情報・物証は「8人は死亡、2人は入境を確認せず」との北朝鮮側説明を裏付けるものは皆無。北朝鮮側の「結論」は客観的に立証されず、全く受け入れられない。
(2)再調査の中核である横田めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部から、別人のDNAが検出されたのは重大な事態。鑑定は十二分に信頼性の担保されたもので、北朝鮮側の批判には何ら根拠がない。松木薫さんの「遺骨」とされた骨の一部からも別人のDNAが検出された。
(3)北朝鮮側は拉致に関する文書は「特殊機関」が一切焼却したと説明するなど満足な回答を行わず、「特殊機関」の存在が真相究明に大きな障害となっている。「証人」の証言もあいまいな内容が多く、客観的事実関係の確認から不十分と言わざるを得ない。
(4)拉致事件の責任者特定、処罰でも刑事事件記録の提示はあったが、どのような命令・責任系統で実行されたかを示すものとは言えない。
(5)わが方の捜査で3人の拉致容疑者の関与が判明。引き渡しを要求したが、北朝鮮は一切応じなかった。引き渡しは真相究明に不可欠であり、このような対応は全く受け入れられない。
(6)北朝鮮側から提供された情報・物証では、安否不明の拉致被害者に関する真相究明には全く不十分と言わざるを得ず、「調査委員会」の再調査は信頼性を欠き、到底、今年5月に金正日総書記が約束した「『白紙』に戻しての徹底した再調査」と呼べるものではない。
政府は北朝鮮に、再調査の結果は極めて誠意を欠く内容であるとして強く抗議するとともに、日本側の精査結果を早急に伝達することとする。北朝鮮側が「日朝間に存在する諸問題に誠意を持って取り組む」との日朝平壌宣言にのっとり、金総書記が行った約束を自らの責任と関与で誠実に履行することで、安否不明の拉致被害者の真相究明を一刻も早く行うよう、厳しく要求するものである。
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