【日本版北朝鮮人権法案】「クルディスタン日本語NEWS」さんの論点
【日本版北朝鮮人権法案】「クルディスタン日本語NEWS」さんの論点
クルディスタン情勢についてのニュースを積極的に発信され、運営者の方自らクルド人難民支援活動にも関与されているブログサイト「クルディスタン日本語NEWS」さんが自民・民主両党が成立を目指している日本版北朝鮮人権法案について私見を述べておられるのですが、私も共感する論点が多々含まれているので、以下、「クルディスタン日本語NEWS」さんの小論をこちらにも転載いたします。
【「クルディスタン日本語NEWS」さんの小論】
■ 日本の「北朝鮮人権法」論議は,日本の難民政策全般の見直しという視点を欠いている
クルド人難民強制送還問題で世界のジャーナリズムが日本の難民政策に大きな疑いのまなざしを向けているこの情勢の最中,日本でもアメリカのような「北朝鮮人権法」を制定しようと,「北朝鮮人権法案、自民・民主案出そろう」というニュースが報じられてました。見ると特に自民党案については,あいかわらず「治安対策」を口実にした法務省流の閉鎖主義が漂っているようで,「日本の難民政策全般」をみなおそうという動きが感じられません。
「脱出住民を積極保護」「北朝鮮の人権改善のために活動する非政府組織(NGO)への財政支援や連携強化」ということも報じられていて,これは自民党としてはめずらしく人権擁護に積極的になったもんだなと思ったんですが,それは北朝鮮絡みに限ったことで,「日本の難民政策全般」については極力手を付けないでおこうという気配が感じられます。
もちろん朝鮮民主主義研究センターさん(2/5)のおっしゃるように,「これは保守政党に期待しうる最良のものと言える」とは言えると思いますし,「どんな意図から出たものであろうと、結果として助かる人がいるなら歓迎すべきだ」といってもいいんですけれど。ただし,いかんせん脱北者以外の難民問題をやってる者からすると,「じゃあなんで難民政策全般を見直してくれないの」といいたくなっちゃうんですよね。
法務省の「脱北者のほとんどは戦災や飢餓から逃れてきた「避難民」であり、条約に基づいて保護すべき「難民」ではないと位置付ける」なる見解がありますね,「避難民」「難民」ねえ。
戦災や飢餓から逃れてきた人が難民じゃないなんてことを考えながらやってる難民支援団体は世界にないと思います。インドシナ難民が大量発生したとき,世界は「避難民か難民か」なんてことを考えながら支援していたわけではありません。
だいたい今後,高い確率で北朝鮮の体制が崩壊すると考えられますが,そうなったときは,おそらく日本にも何十万という大量の難民が流れてくるだろうと容易に予想されます。そうなったときにいちいち「避難民」か「難民」か,なんていう規定にこだわっている暇があるわけありません。いまから「大量の難民」受け入れの準備はしておかなければならない。もうそういうことを議論し始める段階でしょう。
いま,クルド人難民強制送還問題で,世界のジャーナリズムが日本の難民政策に大きな疑いのまなざしを向けているなか,そういう世界の「空気」が読めてません。このまま自民党案の人権法案が成立したところで,世界はこの日本の動きを支持するでしょうか。残虐な難民政策全般を改善することなく,北朝鮮制裁だけに走っている独善として冷笑的に報じられるように思います。
いま必要なのは,日本の難民政策全般の見直し論議であり,その論議の中で脱北者支援等を位置づけていかなければならないと思います。
日本において拉致問題関連を論じている右系の論客たちは,「日本の難民政策全般」に関する理解が乏しく,この辺ほんとうにディスコミニュケーションを感じます。
それと,アメリカの北朝鮮人権法は「困窮状態にある北朝鮮人への援助」というのが明文化されていて,飢餓にあえいでいる住民のもとに確実に届くようなチェックつきの食料支援というのを,ばっちり明文化しています。この考えが,日本の法案にはなさそうです。かわりに議論されてるのが「経済制裁」ですけどね。いや,「飢えて死ぬ子供」を前にして経済制裁なんてやるのか,と絶対世界の人権派は文句つけると思いますね。だから日本でも「困窮状態にある北朝鮮人への援助」をしっかり制度化するというのをやってもらいたいです。結局いま争われてるのは,世界の世論に対する説得力ですから。はっきりいって,北朝鮮の「弱者の恫喝」のほうが世界に向けては迫力ありそうです。
http://www.asahi.com/special/abductees/TKY200502110208.html
北朝鮮人権法案、自民・民主案出そろう 調整は難航か
>北朝鮮の人権状況の改善に向けた「北朝鮮人権法案」の自民、民主両党案の骨格が出そろった。自民党は今国会で成立をめざしているが、日本国内に受け入れる脱北者の範囲や拉致問題の扱いなどについて、両党案には隔たりもある。
>両党案の最も大きな違いは、脱北者にどの程度門戸を開くかという考え方だ。民主党案は、脱北者は北朝鮮に戻れば迫害される可能性が高いとして、国連難民条約に基づく「条約難民」に準じて幅広く保護の対象とすべきだとしている。
>そのため、脱北者保護を「国の責務」と位置づけ、法相が脱北者を「認定」する制度を設け、在留資格の取得や永住許可などの要件を比較的緩やかにしている。
>これに対し、自民党案は、脱北者の身元確認が難しいことなどから、治安対策への配慮を求める法務省などの意見を踏まえ、在外公館での保護は「努力義務」にとどめ、国内への受け入れも「一定の要件を満たす場合」と条件をつけている。
>法務省は、脱北者のほとんどは戦災や飢餓から逃れてきた「避難民」であり、条約に基づいて保護すべき「難民」ではないと位置付ける。政府の基本的な考え方は、国内受け入れを検討するのは元在日朝鮮人とその家族に限り、それ以外は原則として第三国に移送する というものだ。
http://www.asahi.com/special/abductees/TKY200502030272.html
脱北者、条件つき受け入れ 自民が北朝鮮人権法の素案
>外務省や法務省には、在外公館で脱北者を受け入れた場合、その国の政府との関係に配慮する必要があることや、国内で受け入れる際の身元確認の難しさなどから、支援に慎重な意見が強い。こうした意見を踏まえ、素案では保護・支援は努力義務にとどめ、国内受け入れには一定の条件を課すことにした。
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/kyoudou.asp?id=20050203000293
脱出住民を積極保護
自民党の「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」は3日の党本部での会合で、北朝鮮から脱出した住民を日本が保護、支援することを柱とした「北朝鮮人権法」案の骨子をまとめた。
北朝鮮の人権改善のために活動する非政府組織(NGO)への財政支援や連携強化で日本が「積極的な役割を果たす」ことも明記。拉致問題に関しても「(日本)国民への重大な人権侵害が行われている」として、政府が拉致被害者について調査し、問題解決に努力することを盛り込んだ。
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=060000&biid=2005021147668
米、北朝鮮人権法施行の予算は「ゼロ」
アメリカの人権法の邦訳はこちら
http://www.asahi-net.or.jp/~fe6h-ktu/nkhumanrightsact.htm
2004年北朝鮮人権法
投稿時間 2005-02-14 01:15:14
■ 「日本の北朝鮮人権法」について,まこと氏からフォローいただいてます
「日本の北朝鮮人権法案」について,もうひとつ,まこと氏のほうからもコメントをいただいております。14日投稿の「日本の「北朝鮮人権法」論議は,日本の難民政策全般の見直しという視点を欠いている」のコメント欄です。ありがとうございます。超亀レスになってしまいましてもうしわけありませんです。
より詳細には
http://watch.blogtribe.org/entry-b98508e8bd741341478429aa5f1badf2.html
で論じられています。
そうですね,
>しかし、この法案の提出が、日本人拉致問題のみならず北朝鮮の人権問題に広く関心を持ち、「脱北者」保護などの人権擁護活動を展開することが、ひいては「日本人拉致問題の国際化」にも繋がるのであるということを世論に気付かせる一つの契機になる可能性は十分にあると思います。
という可能性はあると思いますね。そういう方向に広げていくべきだろうと思います。
今月号の『Voice』に,現代コリアの西岡力氏と,田口さんの息子さんの飯塚耕一郎さんの対談が載っておりますね。それにちょっと気になる発言がありますね。飯塚氏がこういってます。
>「ヨーロッパは人権問題に関しては、アメリカと同様、躊踏せずに動きます。ヨーロッパから圧力をかけることも可能だと思っています。以前オランダのメディアの方とお話しする機会があったのですが、拉致問題についてヨーロッバの方は全然知らない。北朝鮮が他国の人間を拉致しているというニュースは、まったく流れていないそうです。しかしいざ情報が流れれば、ヨーロッパの人々は強く反応するでしょう。彼らは「人としてどう生きるべきか」ということに大変な関心をもっていますから、ヨーロッパは積極的に制裁に賛同すると思うのです……」
どうも,こういう発言を見ると,果たして拉致問題ってのはどの程度海外でディテールが伝わってるのかな,って感じがするんですね。日本がなんでこだわってるのか。「特定失踪者」のこととか,田口八重子さんと李恩恵,金賢姫のこととか,そういうことってどの程度知られてるんでしょうか。また,日本政府が海外にわからせる努力をしてるんでしょうか。このへん気になります。だから海外へのアピールの問題ってのがありますね。
その点で,いま,日本の評判ってのが,このたびの「反国連的」強制送還で最悪になっちまってますから,これが気になってしょうがないですね。まあ「北朝鮮人権法案」ってやりだすと,どうしたって中国に対して強くもの申さねばならないんですけど。日本自体が,「中国なみ」の強制送還やっちまってますからね。これじゃ強くいえねえぞ,ってところですよね。
上の対談で,救う会の人たちは,この3月にジュネーブで開かれる国連人権委員会総会に乗り込んでいって,直接アピールしたいっていうこと言ってましたね(今までは人権委員会の下の「強制失踪作業部会」に訴えていた)。しかしなあ。「このたびの反国連的強制送還」のことがあるからなあ,なんか日本のアピールってのが,すごく白い目で見られやせんかといまから心配でしょうがないです。まあこれは家族会・救う会には直接責任ないんですが。
それと,『SAPIO』の1/5号に,アメリカの人権法案を作成したという,共和党下院議員ジェームス・リーチ氏のインタビューが載ってますね(『国際社会の関心を高めることが北朝鮮の人権抑圧を止めさせる近道だ』)。そこではこういってますね。
>北朝鮮人権法の目的の大きな柱は(1)北朝鮮における基本的人権の尊重と保護(2)北朝鮮難民の苦境に対するより持続性のある人道的解決を促進(3)北朝鮮への人道援助に関する監視、アクセス、透明性の向上(4)北朝鮮への、また北朝鮮からの情報の自由な流れを促進(5)民主的な政府の下での朝鮮半島の平和的な再統一に向けた前進の促進1の5つに集約される。人権法は、米国による北朝鮮への人道目的以外の支援の条件として、先にあげた拉致問題の進展のほかに(1)宗教の自由を含む北朝鮮の人々の基本的人権の尊重(2)北朝鮮の人々と米国にいる家族や親類との再会(3)国際的な監視の下での北朝鮮の刑務所および強制労働収容所システムの改革(4)政治的表現.活動の合法化一を挙げている。これらの状況が改善されない限り、米国は北朝鮮への支援を行なわないということである。
>しかし、一方で北朝鮮の人々に対する人道援助は促進しなくてはならない。私は食糧と医薬品の支援は決して政治問題化されてはならないと考えている。ただし、人道援助も北朝鮮の政府や軍に利用されることなく、最も苦しい状況にある北朝鮮の人々の手に渡るようにするため厳しい監視が必要だ。人権法は、米国が北朝鮮への人道援助を増加させるための条件として、物資の配布過程の透明性を高め、監視システムを強化することを挙げており、また他国にも同様の措置を求めている。
このへんの発言を見ると,やっぱりさすが「自由と民主主義の総本山」を自任するアメリカの政治家だなあと思いますね。やっぱり自信満々だなあと。いま日本人がこういうふうにおおっぴらに言えないのが残念ですが。
重要なのは「しかし、一方で北朝鮮の人々に対する人道援助は促進しなくてはならない。私は食糧と医薬品の支援は決して政治問題化されてはならないと考えている」という,ここのフォローがあることなんですね。この配慮が,日本の関係者,特に自民党や救う会には感じられないんですね。そのかわり,非常に強く「日本単独での経済制裁」に傾斜してしまっている。
相手は餓死者を出している国ですからね。そういう国に対して経済制裁するというのは,第3国の人たちから見るとすごく残酷なことをしていると受け取られるのだろうと思うんですね。ここに対する配慮を見せて欲しいんですけどね。「救出運動の国際化」のためには,やはり世界の人権派の方々が納得するような手順を踏んでのものでなければならないと思います。ここが気になって仕方ないところです。
法案の中には「人道援助に関する監視、アクセス、透明性の向上」を確保した上で,「食糧と医薬品の支援」については促進するというのをできれば盛り込んで欲しいです。「経済制裁」にはならなくなってしまうかもしれないけれど。
投稿時間 2005-02-22 23:18:53
以上、「クルディスタン日本語NEWS」 http://postx.blogtribe.org/ より。
【参考・・・日本版北朝鮮人権法案に関する当サイト運営者(まこと)の最近の記事】
自民党が日本版「北朝鮮人権法案」の骨子をまとめる−難民保護という理念は支持(まこと)
自民党が日本版「北朝鮮人権法」の素案を纏めたようです。2月4日の「産経新聞」によると、法案の骨子は
> 【脱北者の保護・支援】
>一、在外公館に保護を求めてきた脱北者は日本または第三国に出国させる
>一、脱北者が一定の要件を満たす場合、入管法上の在留資格により受け入れ、定住を支援
>
> 【北朝鮮の人権状況改善】
>一、国際社会の取り組みに、日本も積極的な役割を果たす
>一、北朝鮮の人権状況改善に向けた活動を行うNGOに財政上やその他の支援を行う
>
> 【拉致問題の解決】
>一、安否不明の拉致被害者および拉致被害者であることが疑われる者について、積極的に調査
>一、問題解決の進展状況を国会に報告、国民に公表
http://news.goo.ne.jp/news/sankei/seiji/20050204/m20050204001.html
というものです。
法案の具体的な条文が未だ明らかになっていないのではっきりとした意見は言えませんが、この内容なら私は賛成です。
もっとも、「脱北者の保護・支援」「北朝鮮の人権状況改善」の項目に関してはわざわざ新規に立法せずとも既存の入管難民法制の運用を少し変えるだけで対応できると思いますし、こんな事は北朝鮮難民に限らずあらゆる国の難民(の問題)に対して"普遍的に"実施すべき政策では無いのか?という気はしますが、それはともかく・・・。
勿論、この法案にはブッシュ政権の「テロとの戦い」のレール上にある「対北圧力政策」という側面はあると思います。ただ、難民保護と国際人権への取り組み、そして拉致問題の調査に関する法文化という方向性自体は決して間違っていないと思いますので、私は是々非々の立場でこの法案を評価したと考えています。
そして、この法案はとかく「難民鎖国」と揶揄される日本の難民政策全般に対してはもちろんのこと(昨春の「入管難民法」改定も瀋陽の日本領事館への「脱北者」駆け込み事件が契機になりましたし)、拉致問題に関する日本の外交政策や社会運動にも一石を投ずることになると思います。後者に関して簡単に言及すると、私は運動等で知り合った海外の人権活動家数人と「日本の拉致問題はなぜ『国際化』しないのか?」と意見を交わしたことがありますが、主な返答としては、
・日本の拉致問題に関する政策や運動がナショナリズムに偏り過ぎていること
・日本のような大国が北朝鮮をはじめとする国際人権分野に貢献をせず、国際社会に助力"だけを"求めるのは「虫が良すぎる」こと
といったものがあります。
拉致問題で国際社会の協力を得るには日本も北朝鮮の人権分野で一定の貢献を求められますから、日本での北朝鮮難民受け容れをも視野に入れたこの法案は拉致問題絡みの政策や運動を「インターナショナル」な方向に導く一つの契機になる可能性もあると思います。 拉致被害者支援運動の内部でも「脱北者」保護政策の促進に関しては賛否両論別れていますから、彼らの間でも相当な議論を呼ぶことになるでしょう。
(以下略)
2005年02月05日
http://watch.blogtribe.org/entry-b98508e8bd741341478429aa5f1badf2.html
(以下は「クルディスタン日本語NEWS」のコメント欄に投稿した当サイト運営者の意見)
■ 北朝鮮人権法、カザンキランさんの件について
やましたさん、おはようございます。
自民党の北朝鮮人権法案が日本の難民政策全般の見直しという視点に欠いているという指摘はその通りだと思います。
しかし、この法案の提出が、日本人拉致問題のみならず北朝鮮の人権問題に広く関心を持ち、「脱北者」保護などの人権擁護活動を展開することが、ひいては「日本人拉致問題の国際化」にも繋がるのであるということを世論に気付かせる一つの契機になる可能性は十分にあると思います。
また、自称「拉致被害者支援者」の中にも「脱北者の国内受け入れなど罷りならん!」という、極めてショーヴィニズムな人達は少なくないですよね。そういう層を内包した拉致被害者「救出」運動(の「支援者」)に対して、この法案はある種の踏み絵を迫ることにもなり、「『救出』運動の国際化」を促す契機になる可能性もあるのではないでしょうか。
この見方は少し甘いでしょうか?
いずれにせよ、今後は民主党提出の法案とのすり合わせも行われるでしょうし、今後の法案審議の行方には注目していきたいと思っています。
(略)
まこと@北朝鮮・チベット・中国人権ウォッチ (2005-02-17 08:01:39)
http://postx.blogtribe.org/day-20050214.html
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